一進一退の状態を恐れずに前向きな気持ちで治療を・・・
難症患者さんの治療奮闘記
少し触れただけでも悲鳴を上げる患者さん
なんとか楽にしてあげたいとの気持ちで挑んだもので
「治りたい」と切望する患者さんと二人三脚で、
前向きで明るさを忘れず取り組んだ努力の治療日記です。
椎間板ヘルニアと側弯症。
身体が前に大きく曲がり、そして横にも曲がっている。
こんな患者さんは、開設以来おそらく初めてではないでしょうか。
Hさん、二十六歳。
とにかく、MRIの検査でも20分と入っていられず、
飲み薬、坐薬、注射も効かないというのです。
もともと側弯症があったものの、
ここ3ケ月くらいでひどくなってきたそうです。
初診の時、ひと通り説明して施術に入ろうとしたのですが、
うつ伏せになれない。
それならば、ということで座ぶとんを
2枚お腹の下に入れてみました。
なんとかなるかな・・・?
そう思ったのでしたが、
腰にちょっと手を触れてみても激痛を感じるという。
それでは仰向けになってもらおうと、
やっと仰向けになったものの、膝は曲がったまま伸びない。
「普段は横向きで寝ているのです」といいます。
とにかく動かせるところから動かそうと、
膝をさらに深くお腹の方へ曲げてみる。
痛がっていました。
軽く調整する。もう1度うつ状せになってもらい、
背中から腰にかけて軽く指圧をしてみました。
だが、1分と同じ姿勢をして寝ていられない。
座ってもらう、また寝てもらうの繰り返し。
坐骨の押し上げの後、仙調関節(骨盤の中の一対の関節)
に蹟を当てようものなら、悲鳴一発、顔は歪んで、
それはひどい状態でした。
座ってもらってひと休み。
正座をしてもらいました。
その姿勢が今のところ一番、楽らしいのです。
また施術に入る。足首をゆるめ、膝を曲げてみる。
背部全体をゆるめ、大腿部をゆるめましたが、
骨盤調整法の一通りの流れの中で仙腸関節部だけは痛くてダメ。
そこで考えました。
坐骨に施術者の土踏まずを当ててみる、そして、押し上げてみた。
痛くないという。
これだ・・・!
ようし、坐骨の押し上げを徹底してやってみよう。
初診から10日後、施術を待っていたHさんが、
以前やはり身体の曲がっていたYさんと一緒になったので、
Yさんの施術経過を話してもらうことにしました。
実際の患者さんの話は説得力があるからです。
やはり得るものはあったのでしょう。
励みにもなったと思います。
そして私にも、Yさんの以前の症状、
施術過程をいろいろ質問してきました。
坐骨の押し上げを左右100回ずつやってみようと決めました。
しかし、これも100回つづけてできるほど甘くはありませんでした。
10回押し上げるだけで限界。
座ってもらってひと休み。
それを左右に施す。そしてまた10回ずつ。
毎日これを100回ずつ、かならずするようにしました。
初診から1ヶ月後、左の仙腸関節が初めてグキッと、
軽い音をたてて入りました。
よし、これでいい!
その後、仙腸関節の調整は前よりも痛がらずに
できるようになっていきました。
坐骨の押し上げも、このころになると
左右20回ずつつづけてできるようになっていました。
治療開始3ヶ月目に入り、ようやく仰向けの状態で
両足が仲ばせるようになってきました。
でも、まだ両膝は浮いたままです。
それまで、1~2分おきに休憩(座ってもらう)をとっていたのが、
つづけてできるようになってきました。
座ぶとんなしで施術することにしました。
膝も伸びるようになり、身体もだいぶ伸びてきた、
とお互い顔を見合わせ喜んでいました。
4ヶ月目に入っても、毎日々々同施術がつづく。
でもお互い手応えを感じ、明日はもっと良くなるか、
来週はどこまで良くなるかと、楽しみになってきたという感じでした。
そして、5ヶ月目の末には本当に良くなってきました。
身体は伸び改めてHさんが背が高いのにも驚いたものでした。
痛みも8~9割方良くなってきたと本人が言っていました。
Hさんは途中、「一進一退」「二歩進んで一歩後退」
を繰り返していましたが、
痛い痛いと言いながらも決して笑顔は忘れず、
私との会話も常に前向きで、
「先週よりいいです」
「以前から思えばずつといいです」
と言い続け頑張ったのでした。
Hさんの手記の中にもあるように、
毎日の施術を3ケ月、4ケ月つづけるというのは、
ご家族の協力なしでは絶対にできることではありませんでした。