(4) お尻が痛くて足が冷える 椎間板ヘルニア

当日、指定の時間通りに行き、柔和な風貌の先生と眼が合った瞬間、
(ああ、この先生だ・・・)と思ったのです。

けっしておしゃべりの上手な人ではなく、えらぶることもなく、
患者を思いやる温かさが言葉の端々に感じ取られました。

骨盤調整・・・聞いたこともない言葉ですが、
この先生にお任せしようと思ったのでした。

まず問診です。あれこれ説明されましたが、
あまり耳には入らなかったのか、とんとおぼえていません。

ただ、立って鏡を見なさいと言われて、
指摘された自分の姿を鏡に見ると、
直立せずに身体をぶざまにくねらせて
立っている自分に愕然としたものです。

そして、いよいよ治療です。
治療布団にうつ伏せになった私は、
文字通り俎の鯉の心境でした。

なにがなにやらわからぬままに手術台に
乗った時のことを思い出しました。

片足を持ち上げられ、先生の足が尻に当たり、
含んだような気合いと一緒にグーごと押されたことから始まり、
身体のあちこちを指圧されたり、ねじられたり。

どれだけの時間がかかったのかわかりませんが、
さしたる時間でもなかったように思えました。

最後に、頚椎の調整とかで、首を極端までねじられた時には、
バキーンという大きな音がして、びっくりしました。
その瞬間、頭がすっとして、眼が見開かれたようにパッと
明るくなったのでした。

終わって先生と向き合って座った時です。びっくりしました。
身体がすごく軽くなり、楽になっていたのです。

まるでどろんと澱んでいた身体の水が全て引き、
澄んだ清水がさらさらと、あとからあとから流れ込んでくるような
爽快感に満ち満ちていたのです。
気が付くと、私は泣いていました。

六十を過ぎた男が、人前もはばからず大粒の涙を流して泣いていたのです。
「先生、ありがとうございました。
嘘みたいに楽になりました・・・」

どの病院でも、治療所でもどうにもならなかった症状が、
ただ一回の治療でこんなに気持ちよくなるなんて・・・。
感激でした。

帰りの車中、先生との出会いをつくってくれた姪と甥に何度、
声にならぬ感激の言葉を言ったかしれません。

それから通いがつづきました。先生は言います。
長い時間をかけて悪くした症状だから
一朝一タで治ると安易に思ってはいけません。

完全に治すには、相応の時間がかかると心しなくては・・・と。
だが私は、いつも先生のところからの帰りには、
ほのぼのとした「希望」の二文字を土産にしていたのです。

先生に勧められた、自らの体験記をようやく書き終えました。
私はこの原稿を書きながら、大粒の涙が出て止まりませんでした。

この原稿はつらく苦しい日々との訣別の一文でもあります。
そのうれしさの涙かもしれません。

そして、明日に希望をもてるようになったよろこびを、
私は胸のうちで叫んだのでした。

健康管理は人間独自の理性がなすわざです。
真面目に働くばかりが能ではない。
自分の一番の宝ものは「健康」です。

そのことを忘れず、いま取り戻した自分の健康を
これから大切にしていこうと思いました。