(2) 高齢者に効果的な治療法 右太ももに痛み

Wさんも腰伸ばしのリハビリをしたというが、
所詮はお茶をにごすような処置に過ぎず、
当然のように治るどころか改善の見込みはまるでなく、
状態は悪くなっていくばかりだった。

老化現象・・・老齢者の気持ちを萎えさせるものはない。
いつまでも息災に生きたい。その思いは切実だし、
元気に、健康にというのは大いなる願望である。

実に非情な言葉である。
考えようによってはより残酷といえる。
Wさんもそうだった。

医師の言葉は、そんなものかと漫然と聞いたが、
ショックを受けたのは趣味でやっていた
「フラダンス」を踊れなくなったことである。

フラダンスばかりではなく、いろんな踊りでもそうだか、
当初は健康保持の運動代わりにと軽い気持ちで始めたものでも、
それなりにさまになって踊れるようになると、
いつか夢中になるようである。

踊りの「楽しさ」をわかったということだろう。
フラダンスよりも激しい動きのスペイン舞踏、
フラメンコの高齢者用のサークルをテレビで紹介していたことがある。

びらびらした華美なロングスカート姿の
50~60代の女姓たちが、タタン、タンと足踏みをして、
「オーレ」ごと手を上げてポーズをとる。
結構形になっていたものだ。

こうした老齢といわれる人たちは、
元気に踊れることが自信につながるようで、
趣味というよりは、生きがいみたいなものになってくるのだろう。
Wさんもそうであった。

それが踊れなくなった。
衝撃であったし、気持ちも萎えたのだ。

自然良能会を頼ろうとした気持ちの底には、
(いま一度、フラダンスが踊れるようにならないだろうか・・・?)
という、せつないまでの思いがあったようだ。

踊りが好きということもあるが、踊れることが元気で動ける、
自分の「若さ」の証しでもあるからだろう。

Wさんの判断は正解だったといえる。
整形外科などのように「老化現象」などという便宜的な
言葉で糊塗して、具体的な治療をしないのではなく、
自然良能会は80、90の老齢者でもきちんと調整治療を施す。

そして、成果を出す。
そうした人たちは、医師のつめたい口調で突き放されるのではなくて、
「大丈夫ですよ、まだまだお元気で動けるようになりますよ」
という同会の先生たちの言葉だけでも、
救われた気持ちになって、ほっとする。

そして、言葉通りの結果になる。

本誌では、治療における「言葉の効用」については、
これまでに何度も述べてきたように、
患者さんを励まし、前向きに対処させるためには、
治療と併せて言薬の効果も大きいと指摘してきた。

とはいっても、歯の浮くような調子のいい言葉ではなく、
患者さんを思いやり、安心させる、
心のこもった言葉ということである。

同会長は、症状の説明などは適切にわかりやすく説明するが、
だいたいが多弁を弄するタイプではないので、
そうした声かけはあまりしない人だ。

結果は当人が自らの身体で自覚してもらいたいとの思いで、
それだけに骨盤調整の技は、
先代会長の五味雅吉先生と同じ切れ味である。

治療が終わったときに
(なんだか身体が無性に軽くなったようで・・・)
と治療室を歩いてみて、「楽に歩けます」

びっくりした表情をしてそう言うと、
次にはニコニコと笑い出したのであった。

それから数回治療をつづけたある日、
前の日にフラダンスのサークルに顔を出したといい、
「踊れなくなっていたフラダンスが、
また踊れるようになりました」うれしそうに、そういうのだった。

最初はこわごわ踊ったのだったが、なんにも違和感がなく、
メロディーに合わせてすいすいと踊れたので、
自分でも驚いたのだが、
「クラブのみんなも、あまりに早く踊れるようになったのを、
本当にびっくりしていました」

「それに、前々から空気の悪いところに行くと、
ひどく咳こんでいたのが、この治療を始めてからは、
いつのまにか咳が出なくなったのですよ」とも言った。

だからといって、それで完治したというのではない。

五味会長も常々言っているように、
骨盤謂整はすぐに良い効果が出る、
あまりに効き過ぎる治療だけに、
患者さんがそれで治ったと早合点して、
それっきり治療にこなくなるという一面がある。

効果的過ぎることが骨盤調整の落とし穴だ、というわけだ。
そのことはスタッフも説明していたし、Wさんも理解していた。

その後も定期的に総本部に通ってきた。
まもなく完治した。

当初思ったよりは早く治った。
だが、それからもときたま治療に来ている。
どこが悪いというのではない。むしろ元気溌刺としている。

その元気を保つ「保険」が骨盤調整です、
と笑っていうのだった。

月刊自然良能より