(1) 腰椎椎間板ヘルニア 腰痛と坐骨神経痛

痛みを知って健康の大切さを学んだ
骨盤調整を信頼して

今回は、昨年から治療を重ねてきEさんの症例を報告させていただきます。

Eさんは23歳、それがひどい症状に悩まされ、

Eさん自身も
「不安でたまらなく、将来を絶望しました」と書かれたように、
苦しみ、呻吟し、ようやく骨盤調整のことを知り、
縁あって自然良能会に来られたのでした。

車で1時間かかりますし、電車でも40分、
そこからバスに乗り換えなければならないですから、
歩くのも苦痛で大変だった状況でよく頑張って
通ってこられたと思います。

それだけ骨盤調整という治療を信頼されたからであって、
ありかたいという思いと共に責任も感じています。

初診時の状態は、ひと目見た時点で重症だなと
いうことがわかりました。

不謹慎な言い方かもしれませんが、
まさに壊れかけたロボットで、ぎくしやくした動きでそろそろと歩くさまや、
苦痛に歪んだ表情を見て、いかにつらいかが推察されたのでした。

そして診察を始めたのですが、問診、触診と進めていくうちに、
これからこの状態を乗り越えていくのには体質的にも強くないので、

治癒するまでには時間がかかること、
それにEさん自身の努力も必要であることを説明しました。

同時に現在の身体の状況・・・

骨盤の変位からくる身体全体の歪みについても
詳しく説明しました。

Eさんはそんな説明に、
ちょっと意外そうな表情を浮かべたのでした。

骨盤調整の考え方に釈然としなかったのかと思いました。
だが違ったのです。

Eさんはこれまでに病院での治療を受けけたのですが、
症状の説明はされても、

「その症状を治すためにはどうすればいいか」
を具体的に話してはくれなかった。

それを話してくれたのは、
今回が初めてであったとのことでした。

そうしたことは、骨盤調整に携わる私たちにとっては
当然のことですが、それを意外に思ったということが意外でした。

そうして、骨盤調整は(五昧会長がいわれているように)
急性のギックリ腰のような場合なら数回の調整治療で
治ってしまうことも珍しくはないのですが、

Eさんのように悪化させたやっかいな症状は、
やはり相応の時間がかかります。

それだけにできれば毎日通えれば通った方がいいです。
私はそういって、骨盤調整にかかりました。

来所当初のEさんの状態は、いまもはっきりとおぼえています。

仰向けに寝ている時なども、
痛いほうの左足をまっすぐ伸ばしてはおられず、

それでいて(つらい人特有の動作で)じっとしていると
痛くて苦しいので、常に足をモゾモゾさせていたのでした。

一連の治療を終えましたが、
まず少しでも長く同じ姿勢で寝ておられるようになれば、
それだけ楽になっているということだけに留意しました。

この人の治療は、当初はそうした小さな積み重ねから始めて、
次第に効果を加速させていくことだと内心思ったのです。

それからEさんの通院が始まりましたが、
しばらくは目立った変化は認められませんでした。

ようやく右の仙腸関節がはっきりと動くようになったのは、
秋ごろになってからでした。
ちょっぴり安堵したものでした。

とはいっても、かなり負担がかかった状態で
足の激痛になっていただけに、
それだけに簡単に良くなるとは思ってはいませんでした。

れからが「確実に治す」正念場でもある
こと考えていました。

本人は、右仙腸関節がはっきりと動き、
楽になった分だけ左側の重さ、
違和感がよりはっきりしたようであって、
早く左の仙腸関節にも動きがほしいと願っていました。

それが今年の3月下旬に、ついに左も動いたのでした。
いま現在のEさんの状態は、時々足に違和感があるものの、

外見上は健康な人だちとなんら変わらない動きをして、
遜色がありません。

でも、まだ仙腸関節のズレ癖が解消されていません。

慢性化して悪化したものは、ズレたまま癒着しているので、
矯正してもすぐに悪い形にもどってしまうのです。

Eさんもそうで、きちっと調整しても、
次にくると、もとにもどっているようで、
またピチッと仙腸関節が正しい位置にもどる調整音がします。

難症の患者さんの場合は、一見よくなったようでいても、
こうしたズレ癖のあるうちは

「治っていない」のだから、油断は禁物です。
だからこそ「繰り返し」の必要性を患者さんに
理解していただいて、頑張ってもらわなくてはなりません。

そこを乗り越えれば、体質は確実によくなり、
内臓のはたらきも良好になるし、呼吸器の弱さも改善していきます。

「正念場」といったのはそのことであって、
ここが骨盤調整の大切なポイントなのです。

その変化が自分でわかると「治った・・・」と思い込み、
すぐに治療にこなくなってしまうケースがよくあります。
そのへんの思い違いをよく説明するのもつとめです。

そうした機微を「峠を越える」そう表現する先生もいます。
まさにその通りだと思います。

峠を越えて下りにかかれば、
完全に治癒するまで次第に加速がついて、
一気呵成にいきますが、

峠を上がりきるまでが大変ですし、
私たちにとっては治療と共に、メンタルな面での
ケアも大切なことなのです。

Eさんは、その点をよく理解して、日々治療に努めたのでした。

これまでの症状のつらさ、苦しさ、そして治療の経緯は、
Eさんの「治療体験手記」の中に書かれています。

このEさんの症例を見ても、当人の努力は当然のことながら、
ご家族やまわりの人たちのご理解とご協力が
いかに大切かということを、改めて痛感したのでした。