Tさんが、しくしくした痛みがつづいていた腰が、
ニケ月前に突然はげしくなり、歩くのもままならぬようになって
あわてて病院に駆け込み、
検査の結果、腰椎四番と五番の間にヘルニアが見つかり、
「椎間板ヘルニアです・・・」と宣告されたという。
そして痛み止めの薬と、湿布をわたされ、いわれるままに服用していたが、
いまひとつ良くなる感じがしなかったといった。
それはそうだ、鎮痛剤や湿布はまるで無駄だとはいわないが、
つまりは痛みを緩和する一時しのぎの処置に過ぎない。
「治す」ものではない。
脊椎のプロック注射と同じことで、
治すものではないのに「治療」を受けたと思う人が多い。
それに対比して、自黙良能会」はまさに「治療」をしている。
患者さんは治さなくては意味がない。
そのために間合の先生方は懸命の努力をしている。
それが当然のことだと思っているからだ。
薬を用いず、外科的操作でもなく、日々確実に成果を上げている。
それを可能にしているのはなぜか?
本誌でも繰り返し述べている「仙腸関節理論」、
自然良能を面長して、根本から治す治療であるから・・・。
椎間板ヘルニアも整形外科では、ヘルニア自体をなんとかしようとする。
となると、最終的には突出したヘルニアを除去する手術ということになる。
だが、手術しても治りません。
同会でははっきりそういう。
ヘルニアが痛みの原因ではないからだ。
根源の仙腸関節のズレを正すことにより、骨格、関節の歪みを矯正し、
血液循環を旺盛にし、筋肉、靭帯の硬縮を除くこと。
つまり、これが自然良能力を高めることで、身体全体を健康にす
るということである。そうなると、飛び出ていたヘルニアも
いつの間にか椎間板のもとの位置におさまっているというわけだ。
こうした処置は整形外科ではとうていなしえないことだろう。
Tさんもそうした一人であった。
既往症としては、二十年前に皮下腫瘍の手術をしていた。
盲腸の手術のとき、糸が残っていたのが原因だったが、とんと忘れていた。
その他に大きな病気はしたことがなく、
自分なりに「結構丈夫なんだ」と信じていた。
ただ腰痛は、以前にも何度か経験している。
健康のためにと週一でやっていたテニスが、
無理だったかなとも思ったが、さして気にしなかった。
だから椎間板ヘルニアと診断された今回の症状も、
初めのうちは「そのうちに痛みが消えるだろう」と、
仕事にかまけて放置していた。
仕事は、楽してできるものはないが、ことにシステムエンジニアという仕事は、
頭を使うし、プレッシャーもかかる、緊張の連続の仕雁である。
しかも座って作業することがほとんどであるだけに、
腰への負担もかなりある。
それでも仕事第一で勤めに出て、本当につらいときは、
棚にパソコンを置いて立って仕事をしていた・・・
と、Tさんは告白した。
しかし、椅子に座ってする仕事を、
つらいから立ってするということは、もうアウトだ。
自然良能会の立場でいえば、我慢、頑張りは美談ではない。
早く痛みが出て、治療を受ける・・・正しい治療をだ。
すると治りも早いし、なによりもご本人がらくである。
だから同会の先生方は、激しい痛みに襲われて、
あわてて治療所に駆けこんできた患者さんに、
「痛みが出たことを感謝しなくてはなりませんね」という。
人によっては、激しい痛みに悲鳴をあげながら来だのに、
まるでひやかされたように思って、不快感をもつ人もいるだろうが、
そういう人も少しすると「感謝しなくては」という
先生の真意を理解するようになる。
Tさんのような人は、廻り道ばかりして、損な立場になる。
しかし田淵さんも、同会の治療所が病院や他の
治療所とは趣きが違うことはすぐわかった。
同会の特質は、一方的にいうのではなく、
治療する方とされる方のコミュニケーションを大事」にしつつ、
患者さんに言うことはいう。
なによりも、 いわれるままにハイハイという受動的なスタンスではなく、
患者さん自らが「治る」ために積極的取り組む
能動的な姿勢であるべきだと要求する。
前向きで努力する患者さんが、誰よりも早く、確実に治るからだ。
Tさんもスタッフの指導で、バラコンバンドを巻いて
体操をするようになって、そのことを身をもって理解した。
治療だけではなく、「自分で治すためには・・・」
バラコン体操も必要だ。
その二段セットが自然良能会の真骨頂ではなかろうか?
Tさんは、実際に改善し、よくなっていく患者さんを
その眼で見て、バンド運動を治療室だけではなく、
自宅でも熱心に腰回し運動を励行するようになっていた。
「この治療、このバラコンバンドの効能、それはどこにもない
自然良能会独自のもので、実に画期的だ」
バラコン運動をつづけていて、ふと気付くと、
あれだけ硬く、コチコチであった腰の部分が
ゆるんでいるのがはっきり感じられた。
治療も定期的につづけ、Tさん白身が変化が
身体でわかるようになったときには、
スタッフも治療のたびに確実な手応えを、
感じるのではなく、はっきりと見えたのである。
「やっかいな症状」の部類にはいる状態で、五味先生の、
「Tさんは少し長くかかるかもしれない」といっていた予想より、
かなり早く改善したのであった。
Tさんは頑張ったのだ。
そのことをTさんにいうと、こどものような無邪気な笑顔で、
本当にうれしそうであった。
それから何日かして、Tさんは顔を見せなくなった。
仕事が気になるようなことをいっていたので、
苦笑するしかなかったが、スタッフの本音は、
「もう少し頑張って、芯の芯まで
治療しておいたぼうがよかったのに・・・ちょっぴり残念」
というものだった。
ところが今年になって、Tさんはひさしぶりに顔を出した。
変形作膝関節症とか。そういうことは、
整形外科に行って病名を付けられたのである。
Tさんは、「腰の痛みはないのですが・・・」
まるで弁解するようにいって、右膝がおかしくなったので診てもらうと、
「変形性の膝関節症といわれたのですよ」そうはいったが、
Tさん、涼しい顔をしている。
自然良能会へいけば治してもらえると、
安心しきっているような感じなのだ。
事実、そのようなことをいったこともある。
そして次に来たときは、「バンド巻きを頑張っていると、
膝の痛みもだいぶ薄らぎました」というのだった。
それからも通ってきたが、いつも午前中はテニスをして、
サウナなどで汗を流してから治療にきている。
「もっと調子がよくなっても、
この治療は今後もつづけたいと思っています」
月刊自然良能より