妻であり、母であり、
歯科衛生士として働くキャリア・ウーマンでもある。
初めて治療所を訪れたのが二月七日。
症状の訴えを聞くと、二十歳以来の腰痛で、
排尿、排便時に足が痛く、腹圧をかけられない。
左座骨神経痛、排卵痛、右肩痛もある。
足を投げ出して座らせてみたところ、後ろへ倒れる。
診断したところ、骨盤は捻れて右前上へ、脊柱も複雑な曲がりである。
学生時代はバスケットで体を鍛えており、
その後も腰痛体操を繰り返し行なっていたため、
何とか耐えられていたようだ。
しかし顔は血の気がなく、吹き出物が口のまわりに点々とある。
症状の悪さを証明しているかのようだった
骨盤調整後一日で排尿時の痛みが止まった。
二日目からは走れるようになった。
二ヶ月間順調で、このまま治るかのように思えた。
ところが四月半ばのこと、左脚に激痛が起こって歩けなくなった。
聞けば、早く治そうと思って毎日二時間も骨盤運動をしたという。
他の人がバラコン運動を一万回したところ
十二指腸潰瘍が治ったと聞いて、負けられないと思ったらしい。
本当に素直で真面目な人だ。
しかし、先生は「将来痛みが出るのを早く出して、
骨盤の捻れを早く治せと体が催促していると思って頑張ろう」
と励ました。
その日から一日三回の治療を行なった。
令子さんは治療所の奥の片隅に巣を作ったかのように一日中いる。
痛いので横になっているが、何分かおきに起きては、
バラコンバンドを巻いたり外したりしている。
風が当たると痛いので、治療所の窓も開けられない。
トイレに行くのも、廊下まで這って行く。
朝は母親が送ってきて、夕方はご主人が仕事を終えて迎えにくる。
この頃、あまりの痛さに橋から飛び降りて死にたいとまで思ったという。
だが、自分で車は運転できないし、飛び降りようにも足が橋の欄干まで半がらない。
月刊自然良能より