正しい治療とはなにか?
根本の問題をあらためて考えよう
自然良能会では「たかが腰痛、されど腰痛」と
常に注意をうながしているのは、
腰痛や神経痛といった症状をややもすれば
軽視しがちな傾向に、警告を発する言葉です。
それらははっきりした患部が見えないこともあり、
もともと病気という感覚でとらえていないようで、
その一例が肩こりです。
肩こりを誰も病気とは考えていません。
だいたいが「こり性だから」とか「疲れからだろう」と
安易にとらえていますが、
肩こりもはっきりした原因・・・骨盤変位があり、
そのメカニズムから発した症状のひとつで、
肩こりが肩こりで終わらず、放置しているといろんな
症状に発展していくものです。
だから病気といっても過言ではありません。
腰痛も首の痛みも同じことで、
安易に考えていると大変なことになりますよ、
と注意しつづけています。
今回の頚椎ヘルニアの症例で、改めてそうしたことについて
考えてみたいと思います・・・。
■ 椎間板ヘルニアと診断
Kさんは、63歳になる。
160センチくらいの身長。
自然良能会に来たのは、去年の3月初め。
患者さんであるYさんの紹介であった。
最初に治療室に入ってきたときは、
いかにも恐るおそるといった感じの、
そろそろとした足取りだった。
もっとも治療所であるから、
最初から「こんちわっ」と元気な足取りで入ってくる人は、
まずいない。
それぞれがそれなりの歩き方をしてくるし、
スラッフもその歩行する姿で体調の大まかな度合いを測る。
Kさんは、右足を擦るような歩き方をしていた。
そんなKが訴えた症状は・・・?
「現在、首と肩に強いコリがあって、
右腕にはシビレがあり、全身がだるくて、つらい。
首がつらくなる前には、下肢に痛みとシビレがあった」
首がつらくなる前は、下肢に痛みとシビレがあったという
Kさんの説明は、そのまま聞けば
以前はあったがいまはないというように聞こえるが、
そうではないのだ。
首と肩の強烈なこりからくるだるさ、
つらさぱかりに神経がいっていることから、
そうした言葉になっただけで、
下肢の症状は依然としてあるようだ。
「それだけではなく、腰痛もあったのではないですか?」
との問いに、Kさんは、
「そういえば、昔から腰痛がありました」と答えた。
そう、これらの症状は本来腰痛から発したものであるのだ。
つまりは根本の原因は骨盤(正しくいえば仙腸関節)の
変位からきたものといえる。
自然良能会が常々いっているように、
人体の要ともいえる重要な役割を担っているのが骨盤です。
骨盤が左右均等に正しく位置していれば、
その上にのっている支柱である脊椎も安定し、
また下肢も負担を応分に分けて正しい動きをしているもの。
とこちが、なんらかの事情で骨盤が傾ぐと、
当然上に乗っている脊椎は不安定になり、
従来均等にかかっていた負担が偏って過剰にかかるようになる。
下肢の長さも狂いだして、
やはりどちらかに過剰に負担がかかるようになる。
そうしたことから、痛みやシビレなどの症状が出るものだが、
そのメカニズムについての考え方が大きく異なっている。
まずは、骨盤が歪む「なんらかの事情」であるが、
現代医学ではレントゲン写真などで傾きが
はっきりと認められても、なんら斟酌しない。
痛み、シビレ等の原因とは関係がないと考えている。
その言葉を使うのは、
「なんらかの事情で腰痛が出た場合・・・」
といったように、痛みの発生の説明に使用している。
「なんらかの事情」は茫漠として説明になっていない。
自然良能会では、骨格を狂わす根本原因は
仙腸関節のズレからくるもの、と具体的に説明している。
人体の支柱である脊椎は、上から頚椎、胸椎、腰椎とつづく
24個の椎骨から成っている。
仙骨に連結しているハート型をした仙骨を、
ふたつの寛骨(腸骨、坐骨、恥骨)が左右から
包み込むようにして骨盤を形成しているものであって、
その仙骨、腸骨を結んでいる左右2対の関節が
仙腸関節というわけだ。
仙腸関節は耳状面の小さな関節で、
現代医学ではずうっと無視されていた関節です。
同会の創設者である五味雅吉前会長は、
すでにこの関節の重要性に着目し、
仙腸関節のズレこそが諸症状の根本原因と確信し、
研讃を積んで、「これこそが真の治療法だ」と
骨盤調整を編み出したのであった。
理論はきわめて簡単である。
仙腸関節のズレで骨盤が歪み、傾くと
当然のように脊椎や下肢に過剰な負担がかかるようになる。
その一例が「椎間板ヘルニア」である。
骨盤の傾きで、重い頭部の支えが不安定になって、
自然にバランスを保つために踏んばるために
余分な力をいれることになる。
ことに脊椎の基部(腰椎4、5番)に必要以上の力がかかり、
その負担に耐えられなくなって脊椎はS字状に歪む。
そこで腰椎4、5番や、5番と仙骨の間の椎間板が圧迫され、
椎間板の中のゼリーみたいな半コロイド状の髄核が、
周りを囲んでいる繊維輪を破ってはみ出し骨化する。
それが「ヘルニア」
現代医学は、その突起したヘルニアが神経にふれて
痛みを発するものとして、
腰椎椎間板ヘルニアと病名を付ける。
最終治療(手術)法はそのヘルニアを削り取ればいい。
神経は柔軟性があり、突き出たヘルニアを巧みにかわすから、
その痛みはあくまでも従犯であって、
正犯は骨格の変位がもたらす血液循環、神経流通の
阻害や、筋肉、靭帯の硬縮が痛み、シビレといった症状を
誘発するもの。
現代医学の主張する方法で手術をしても再発する。
それは根本原因の骨盤の歪みを放置したままだからだ。
最初腰椎4番と5番の間にヘルニアが出れば、
今度は5番と仙骨の間にヘルニアを認める。
そのたびにヘルニアを除去していると
本来身体の動きがスムーズにできるように、
潤油の役割を果たしている椎間板がなくなって、
あやつり人形のようなぎくしやくした動きしか
できなくなってしまう。
ところが骨盤調整だと、手術せずに椎間板ヘルニアが
治るばかりか、突き出ていたヘルニアも
次第に小さくなっていき消えてしまうことも。
もとの椎間板にもどる、そういう蘇生効果もある。