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① 先天性股関節脱臼の考察

自然良能会調整治療レポートは、
患者さんが骨盤調整に罹ってどうなったかという、
治癒するまでの経緯を詳しく述べることにとどまらず、
骨盤調整という画期的な治療の本質というか、
ありかたについて述べつつ、
「正しい治療とはなにか?」を考察することを旨としている。

自然良能会と整形外科とでは、
根本的に考え方が違うし、立つ位置も異なる。

争点は「骨盤」だ。
正しくいえば、骨盤内にある一対の関節、
仙腸関節である。

自然良能会は骨盤こそがあらゆる症状の
根本原因だと主張している。

これは同会の創始者である五味雅吉先生、
現会長の五味勝先生の二代にわたって
提唱してきた理念なのである。

編集子の知り合いの熟年の奥さんの例だが・・・。
右脚が痛くて、歩くのも難儀していた。
整形外科に罹ったが、
なぜという的確な原因の説明もなければ、
具体的な治療もされなかった。

湿布と鎮痛剤を渡されただけだ。
その奥さん、なにかの用で電話をかけてきた友人に、
その人もいろいろな症状に悩んでいたので、
いわば同病相哀れむで、
「足がこうこうで痛いのだけど、
整形外科ではいまひとつはっきりしなくて・・・」

すると翌日またその奥さんから電話があった。
娘さんのご主人が整形外科医とかで、
問い合わせしてくれたという。

「娘の旦那がいうには、骨盤に原因があるようだから、
その方面の専門家に診てもらった方がいい、
といっていたわよ」

その話を聞いて、整形外科も従来通りではないのだ、
それなりに視野を広めたのであろうかと思った。

さて、今回の症例のSさんは、
現在五十九歳、現役の看護師さん。

初めて治療に来だのは、昨年の四月。
春爛漫の季節であった。
Sさんは苦しげな表情で、
左足をひきずるようにそろそろと歩き、
ようやくという感じで治療室に入って来た。

訴えた症状は「股関節脱臼」。
左側の腰から膝にかけての激痛で、
部屋の中ならなんとか歩けるのだが、
外を歩くのはうまくいかず、
やっとの思いで歩いているといった。

職場(病院)で鎮痛剤をもらって用いていたが、
さしたる効果もないとか。
それに背中も痛いと訴えた。

問診していたスタッフは、
皮肉ではなく、素直な気持ちで、
「Sさんは看護師さんであるのに、
勤めている病院の整形外科で診てもらおうという気は、
まるでないようだ」と、ちょっぴり疑問に思った。

だが、五味会長の著書に、
「病院関係者ならば、重度の椎間板ヘルニアになり、
手術しかありませんねと整形外科の医師にいわれても、
十人が十人、手術しますという人はいません。

自分がヘルニアに罹ると、きまって別の治療に頼る。
なんとも変な話であるが、それが現実なのだ」
という文言がある。

ヘルニアであろう、股関節脱臼であろうと症状は異なろうと、
整形外科のありようを如実の物語っている一文だ。

しかしSさんは、整形外科の事情に精通して、
病院が駄目だから骨盤調整をたよってきた、
というわけでもないようだ。

しかし、そんなスタッフの疑問はすぐに解消した。
なんのことはない、Sさんは十三年前に、
自然良能会で治療を受けたことがあったのだ。

先天性股関節脱臼だという。それが出たのだ。
Sさんは四十代前半であったから、
発症するのが遅かったのか否か。
といって、それがよかったというわけではない。
むしろ逆である。

先天性股関節脱臼という女性特有の症状については、
これまでにも機会あるごとに述べているので、
改めていうまでもないのだが、
自然良能会では股関節脱臼を難症で別格としている。

その最大の要因は、潜伏期間が長いということだ。

先天性とは文字通り、
生まれながらにして股関節脱臼であったのだ。

おそらくお母さんが骨盤を歪ませていたのであろう。
傾いた骨盤であれば当然、
胎内にいる赤子は据わりが悪くなる。

逆子になるのも母体が骨盤を狂わせていたからだ。
でも逆子なら、妊娠中に骨盤調整を受け、
バラコンバンドを巻けば正常な位置におさまる。

しかし股関節脱臼は同じことのようだが、
実態はまるで異なる。
衝撃の度合いが達うということだ。

生まれたばかりでも、
股関節が脱臼していることはわかる。
その段階に正しい治療を施せば、
後年になって「悲劇的」ともいえる
壮絶な思いをしないですむ。

ところが、現代医学の対処法では、
赤ちゃんの両足を直角に拡げた形にして、
コルセットで固定し、そのままで放置しておく。

乳幼児といえども窮屈で、苦しいのではなかろうか。
そうしてしばらくそのままにして置き、
ほどよいところでコルセットをとる。

問題は発症までの潜伏期間の長いことだ。
早くても二十歳前後。多いのは結婚して、
子どもを生んだ後に出てくる。

バケツ型の男性の骨盤と違い、
女性の骨盤は子どもを産むために
横に広いタライ型だから、
どうしても股関節が脱臼しやすくなっている。

それが出産のときは、ズレるまでに拡がるのであるから、
普通の人でも脱臼しやすいのに、
先天性というようにもともと脱臼しているケースは、
長年体内でマグマを溜めに溜めて火山が噴火するように、
最悪な形で表に出てくるのだから大変なのだ。

女性の出産後に発症する例が多いから、
平均値としてニ十代前後のころ、ほぼ三十年有余、
体内でさんざん悪くしたものが、
半端じゃない激痛、歩行困難という形で一気に出る。

さらに四十代、五十代に入って噴火するケースもある。
それだけ長い期間潜在していたのだから、
ドンと噴出したときはいかにすさまじいか。
その言葉では表せない苦しみは、
当事者でしかわからないことだろう。

この疾患については、ハ広壮で出した
「股関節脱臼 骨盤正せばこんなに違う」
に詳しく説明しているので、ご一読ください。

月刊自然良能より