① 治す治療とは 椎間板ヘルニアの考察

訴えた症状は当然「椎間板ヘルニア」だ。
はっきりした症状が出たのは3ヶ月前だったという。
しくしくした腰の痛みと、右足のしびれはその前から自覚していた。
「この感覚、どうしたのだろう?」

と、かすかな不安をおぼえていたが、
そうしながらも日々の勤めにかまけて、
そのままに放置していた。

ところが急に痛みが激しくなって、
(これは大変だ!)と病院へ行き、
整形外科を受診したのだが、
そこでのMRI等の検査で「第四、第五腰椎の椎間板ヘルニアです」
と宣告されたのであった。

自然良能会に来たときのSさんは、
整形外科医の指示でビタミンE剤を常時服用し、
腰部と右仙骨、右足に湿布を貼っていたのだった、

そんなSさんを見て、スタッフは、
(これはなにを意味しているのだろうか・・・)
小首を傾げた。湿布を貼るのは患部の痛み、
しびれを和らげる効果はあるが、それは一時しのぎの処置であっても、
いうところの「治療」とは言い難いと思った。

目々骨盤調整に携わり、その成果を実感している
スタッフであればこそ、なおさらの感想であろう。

しかし、ビタミン剤の服用も、湿布を貼ることも、
整形外科医としてのそれなりの方法であろうし、
このことについて云々する気はスタッフにはない。

自然良能会は、常に提唱する、「万病一元、血液循環不全」
の理念通り、腰痛、神経痛などのいろいろな障害は、
全て骨盤内の仙腸関節のズレが根幹の原因で起きる。

どうしてそうなるかというメカニズムについては、
本稿で緩々述べているのでここでは省説するが、
この骨盤(仙腸関節)の狂い、歪みが全ての原因であるならば、
骨盤を調整して健全な血液循環にもどせば、
症状、疾患は自ずと解消する。

それは自然良能会の全国の骨盤調整の治療所で、
日々多くの患者さんを「治している」まぎれもない事実が、
そのことの正しさを証明している。
 
自然良能会会長の五味先生に
文字通り手取り足取りして教わった、
他に比肩するもののない「骨盤調整」のノウハウを、
教わったように実践する。

その正しさを毎日、身をもって実感している。
それが近い日に新たな支部として治療所を開設するとき、
どれほどの糧となるであろうか? 
期待と不安がこもごもであるだけに、
Sさんの治療にも雑音抜きで頑張ろうと思うのである。

それにしてもSさん、10年前に坐骨神経痛を体験しているという。
昨日今日の症状ではない。
そのときは、「漢方薬で完治したのでしたが・・・」
とSさんはいう。

つまり、そのときの坐骨神経痛と、
今回の椎間板ヘルニアは別のものという考えなのである。

だがスタッフは、「痛みが消えることと、治ることは違います」
とはいわなかったが、両者の間の10年という歳月、
磯貝さんの体内では一本の線で結ばれたままで、
疾患の誘発という噴火の機会をうかがって、
潜伏していたに過ぎない・・・ということを、
どう理解していただこうか? との自問自答が胸の裡であった。

ただ万病一元で、真の原因は骨盤の狂いである以上は、
骨盤を調整して正しい位置におさめなくては、
症状が根本から治らない、ということだけを言い、
ともかく治療に入った。
 
初診の患者さんは、例によって五味会長が自ら行う。
そこでスタッフは、同会長が治療室に出るまで、
緩めの操作(指圧)を施したのだが、
指で押すSさんの身体が筋肉質で
がっしりとしていることに改めて感じた。

治療室に入ってきた当初は、腰の痛みで顔をしかめ、
前かがみのへっぴり腰で、そろそろと歩いていたし、
なによりも初めて患者さんに接するときは、
症状と状態の良し悪しばかりに神経が集中し、
患者さんそのものを注視しないだけに、
そういうことはあまり感じなかったが、
改めてみるとSさんは「なにかスポーツをしていたのか?」
と思わせる、いうところの体育会系の身体だったのだ。

そのことについては後にふれることにして、
五味会長の治療が始まった。
いつものことだが五味会長は、まず初めにうつ伏せになった患者さんの
両足首をくっつけて、直角に折り当人に、
振り向かせてが右の足の長さの違いを見せる。

仙腸関節がズレておれば、両足の踵はそろわないものだ。
どちらかがかならず短くなっている・・・。
ほとんどは右足であるが・・・
それが仙腸関節がズレている証しになるのだ。
 
ざっくばらんにいえば、仙腸関節がズレると、
骨盤は左右どちらかが後方斜めヒに傾ぐ。
すると当然傾いだ側の足も持ち上げられて短くなる。

その上に骨盤の中にめりこむから、
足の長さが違うことが珍しくない。
こうしたことを患者さんにわざわざ示すのは、
単なるハフオーマンスであることは、
同会長ご白身が承知のことである。

なによりも足の長さの明確な違いを見せることで、
最初にインパクトを与え、自分の状態に緊迫感をもってもらえば、
仙腸関節のなんたるかを理解しやすいし、
治療に取り絹む姿勢も追ってくるので、
あえてこうした手法を採っているのであろう。
 
Sさんもやはり右仙腸関節を大きく狂わせていた。

月刊自然良能より